君がいれば





 夜空を見上げた。
 この空と、あの空は、一体どう違うんだろう。
 おれは、このままどうなるのかな。

 夜の庭は真っ暗で、風が気持ち良い。散歩には最適なスポットだ。
 ふと、夜露で濡れた草がしな、と揺れる音がした。
「陛下」
 声の主は、俺の姿を確認すると、持ってきた毛布をかけてくれた。
「陛下って言うなよ、コンラッド」
「つい。でもユーリ、こんなところでは風邪をひきますよ?」
 そう言っておれの隣に座る。
「……なんか眠れなくてさー、情けないことに」
 帰れなかった。
 不安が心の中を支配していく。
 おれはそのままコンラッドに肩をあずけた。
「地球に帰れないの、辛いですか」
 俺のほうは向かないまま、でも預けた体は受け止めて彼は問う。
「辛いっていうか…」
 ホームシック、っていうほうが正しいのかもしれない。当たり前みたいに在った日常には、もう戻れないかもしれないんだ。  村田、心配してくれてるかな。おれが水族館に連れて行ったばっかりに、って責任とか感じなきゃいいけど。
「か…」
 おれは、吐き出しかけた弱音をすんでのところで飲み込んだ。  ここで「帰りたい。もう嫌だ」と言ってしまえばどんなに気が晴れるだろう。でも、おれはもうやると決めたんだ。魔王になって、この世界を変えてやるって。だから、投げ出したりしない。やれるとこまでやってやる。
 うつむいて声を押し殺すおれの背中を、コンラッドは優しく撫でてくれた。
「ユーリ。辛いときは辛い、寂しいときは寂しいって、言っていいんですよ」
 言って欲しかった言葉が、そこにはあった。
「なんで…っ!そういうこというんだよ。必死で我慢してるおれの努力を…無駄に、しやがって」
 もう、涙があふれてあふれて止まろうとはしなかった。
 おれは、何かにすがるようにコンラッドに抱きついた。彼は、おれを子供でもあやすようにずっと受け止めてくれていた。泣いている間、ずっと。
「知ってますか?」
「何を…だ、よ」
 ようやく声が出せるようになったころ、そのままの体勢で彼は言った。
「何かにつまづいたときは、空に手をかざしてみるんです」
 おれの体をゆっくり離し、目に溜まった涙を、彼の温かい大きな手でぬぐってくれてから、そっと、空に手をかざした。
「手を?」
 手をかざしてみる。湿気を少し含んだ風が、手に触れて気持ちよかった。
「この風はきっと、どこかでみんなとつながっているんですよ」
 ふと、ここでであったいろいろな人の顔が浮かんだ。
「綺麗な星だな」
 立ち上がってお尻をはたく。夜露で濡れて、冷たい。
「そうですね」
 先に立ち上がっていた彼は、おれに手を貸してくれた。ゆっくりと握る。彼が握り返してくれる。
 安心した。
「おれ、もう大丈夫」
 そう大丈夫。
 おれには、こんなに心強い仲間たちがいるんだから。
「じゃあ、帰る前にジョギングでもしましょうか」
「お!いいじゃんジョギング。いつもと違う時間帯ってのも新鮮な感じ」

 もう一度、空を見る。
 あの、星にみたいになれたらいいな。
 



りみさん、おまたせいたしました!!
とりあえず、完成です。ラブラブ書くっていったのに、シリアスな展開が!!もうほんとすいません。待たせた挙句、こんなんで。
次男出すと、どうも切なくしたくなっちゃうみたいです。
こんなんでよければ、お持ち帰りもOKですので(いりませんよね)
ちなみに、BGMは、ミスチルの「星になれたら」。なんか、好きなんです、この曲。
最後のところ、一発変換で出たのは、「保志みたいになれたらいいな」…は?保志さんは、いいよ。
2005.2.22
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