勝負





 部屋に入ったとたん目に入ったのは、大きなライオンズカレンダーだった。
「にしても渋谷の部屋って殺伐としてるよねー」
「…殺伐って。シンプルとか、片付いてるとか言えねーの?」
 今日は土曜日。明日は休みだ仕事も無いってことで、僕は渋谷ん家に泊まりに来ていた。
 全体的にさっぱりとして清潔感のある部屋。勉強机の本棚には、教科書よりもスポーツ新聞の切り抜きのファイルのほうが多い。部屋の端においてあるベッドには、母親の趣味らしい緑のチェックノシーツがかかっていた。
「で、何すんだ?」
 渋谷は僕を部屋に招きいれてドアを閉めると、ドスンとベッドに腰を下ろし、あぐらをかいた。
「うーん、そーだねー」
 暑いのか、胸のボタンを一つはずして、僕のほうを見上げている。自覚は無いんだろうけど…。罪作りだよ、本当に。
「たまにはゲームでもしようか」
 心なしか声が上ずってしまった。まずいまずい。
 渋谷はそんな様子を見て一瞬眉を顰めたが、すぐに笑顔に戻った。
「よーし、ゲームねー。たまには体を使わないってのもいいな。で、何のソフトにする?」
 見ると既にPS2のコードをTVに接続し始めていた。
「えーっとねー、一応色々持ってきたけど?渋谷が好きなの選んでいいよ」
 僕は着替えやらなんやらを持ってきた大きめのバッグを開け、中から本屋のビニール袋に入れてきたゲームソフトをとりだす。
 初めこそそれを明るい顔で見ていたが、だんだん彼の顔は呆れた様になった。
「サカつく、ファイファン、ドラクエ、ラグナロク、ギャルゲー…。てか、二人用のゲームとか無い訳?これじゃ単に村田が進め中のゲームをおれの家でやるだけじゃん。ほら例えば桃鉄とか格ゲーとか」
「まったく、ノリ悪いなあ渋谷は。格ゲーもちゃんとあるって」  ま、その顔が見たかったわけだけど。

「ところで」
「あ?」
 キャラ選びに没頭している渋谷は、TV画面から目をそらさずに曖昧な返事をした。
「普通にやったらつまらないと思わない?勝負しよう」
「勝負?いいね、なんか燃える!よーし、乗った。じゃあ負けたほうは勝った方の言うことをなんでも一つ聞くって事で」
「了解。後悔しないようにねー」
「はあ?言っとくけど、おれ強いよ?昔よく勝利に鍛えられたからさ。ま、格の違いってやつをみせてやる!」
 自信満々の渋谷の顔。さあ、どうしたものか。
 スタートボタンを押すと、READYGOと始まりの合図。
「おりゃ!」
 先手をきったのは、渋谷操るやたら筋肉質なキャラ。さっきやけにキャラを熱心に見てると思ったら、こういうからだが理想なんだろうね。
 その1Pのキャラが僕操る眼鏡っ娘女の子キャラにタックルを食らわせる。ひるんだ隙に、ロー、ハイ、回し蹴りと反撃のチャンスを与えない。だんだん2P側のHPが減っていく。
「どうだよ、村田」
「どうだって言われてもね。渋谷、油断は禁物だよ?」
 渋谷が僕に話しかけているうちに、足払いをして転ばせた。そして投げ技。相手は立ち上がろうとするが、そのままHPがある程度減らないと出せない隠しコマンドの必殺技をお見舞いする。意外とあっさりと、2PWinの文字が画面に表示された。
「はー?マジかよ。反則に強いだろ、この技!」
 渋谷はやり直しを要求したいらしい。
 でも、そんな可愛い顔で見たって駄目。
「勝ちは勝ちだろ。みっともないよ?そういうの」
「…わーったよ、負けだ負け!もう煮たり焼いたり好きにしてくれ」
「ほほーう、好きに、ねえ?」
 僕の位置からすると、渋谷の後ろには丁度ベッドがある。
 
 そして渋谷は、次の日口も聞かずにそうそうと僕を部屋から追い出した。




えと、こんなん出ました!
遅くなってすみませんでした。一応、ムラユです。でも、ムラ→ユって感じですね。
ユーリは自覚無しであれこれ言って、村田さんはいつも萌えてるんじゃないかなあと。
こんなんでよければ、もらってやってください。

この小説は、桜梅 花 様のみ、お持ち帰り可です。
2005.2.20
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